ブゥトンと薔薇(2) ガーゼハンカチのトリュフソース編
ここは小笠原家別荘。 繁華街に繰り出した祐巳は、ついついウィンドウショッピングに夢中になって夕食の時間に遅れてしまった。 「お帰りなさい。祐巳。お夕飯はまだでしょう?暇だったから私が作ってみたのよ。食べてくれるでしょう?」 お姉さまに出迎えてもらえて、あぁ、私はこんなにもお姉様に愛されている。 大声で叫んでしまいたい。 私にはお姉さまだけで、もう十分、他には何もいらない。
「ねえ、祐巳。街は面白かったかしら?」 「いえ、お姉さまがご一緒ででないと、なんだか全てが色あせてしまって…」 お姉さまのいない外出のなんとつまらない事だったのか… だから、その言葉は正直な言葉。 「そう、つまならなかったの…それなのに、行ったのね。」 「え、えぇ。」 って…お姉様、もしかして怒ってらっしゃる? でも、華やかに微笑まれたままだし… 「祐巳のお母様は気が利くのね。お米をお土産に持たせてくれるなんて…」 「はい。」 「ご家族の方にお土産を忘れてはいけないわよ。貴方はそそっかしいところがあるから心配だわ。」 「はい。気をつけます。 」 「…街では、何かを買ったのかしら?」 「いえ、特には何も…って、あ!!」
もう、それはどうしようもないことだった。 私に出来るのは… 素直に謝罪の気持ちを伝えるだけ… 「お姉さま。お土産を忘れてしまいました。お姉さまへの…」 「何を言ってるの、貴方が無事ならそれが一番のお土産だわ。さあ、召し上がれ?」 やっぱり、お姉さんは優しくて、 笑顔があまりに美しくて、 綺麗で、凛々しくて、私にとってただ一人の、私をこんなにも幸せにしてくれる人。 だから… お姉さま大好きって、 正直に思えてしまうのだ。
「はい。頂きます。」 感謝を込めたその言葉、 それで想いは通じるはずだって、 私とお姉さまは姉妹で… って、こ、これって… 『ガーゼハンカチのミルフィーユ風トリュフソースがけ』 「お、お姉さま?」 「祐巳は、好き嫌いないのよね?間違いなくキヨがそう聞いたって言っていたわ。」 「は…はい。い、頂きます。」 そう言った時も、それを何とか飲み下した後も、ずっと… お姉さまは、やっぱり、微笑んでいた。
(みゃあ)この祥子さまは…間違いなく「S」?(^^;
2005.1.29