黄薔薇的日常

 

まるで、夢の中にいるような光景だった。

寝台には、眠れる森の美女が熟睡している。

乱れた黒髪が顔やむき出しの腕を這うように覆って、色白の肌をより一層白く引き立たせている。

不意に、お姉さまが寝返りをうったので、祐巳は飛び上がるほど驚いた。

だって、あまりに近くにお姉さまの顔があったから。

長いまつげに通った鼻筋、それに艶やかな唇が目の前に…。

早鐘のように、鼓動が高まって…。

 

 

「…っていうことがあったんだって」

夏も終わりに近付いたある日の午後。

由乃は、目をキラキラさせながら両手を握り合わせた。

「別荘でのこと?…それにしても、『眠れる森の美女』とはね」

昼食のお皿を重ねながら、令は苦笑する。由乃の誇張だの願望だのが多分に入っているから、どこまでが祐巳ちゃんの話なのか判断がつかない。

「いいなぁ…祐巳さんとこは。何をするにも新鮮で」

さりげなく水を向けてみるのだが、彼女の姉は涼しい顔で気にも留めていない。それがしゃくに障る。

由乃はぶーたれた。

 

 

富士登山は確かに新鮮でドキドキもしたが、令ちゃんはやっぱり令ちゃんだった。

祐巳さんと祥子さまみたいに…などと贅沢は言わない。もう少し刺激的な展開があってもいいではないか。

それなのに、令ちゃんときたら…

「由乃」

一瞬閉じた目を開けると、令ちゃんの顔がドアップで目の前にあった。

近い。これは、めったにないほど近い。

そうなると、さすがは前年度ミスターリリアン。それでなくても大好きな令ちゃんであるから、自然と寄り目になる。

「な、なに」

 

 

ドキドキド…

「歯に青ノリ、ついてる」

「………」

…えーえー、わかっているわよ。

最初から期待するだけ無駄だった。私たちの間に、酸いも甘いもありはしない。

これが私たちの日常。

…令ちゃんのバカ。(クッション連打中)

 

本日の昼食は令ちゃん特製、お好み焼きでした(笑)。

2005.2.4

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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