写真部のロザリオ1

 

 4月。
 蔦子さまと出会ってから、ヴァレンタインデイから、2ヶ月が経っていた。
 
 私はこの2ヶ月でどれほど変わったのか…
 その答えは私の中にない。
 ただ、僅かな変化といえば…
 あの人のことを
 武嶋蔦子さまのことを考えるようになったこと。

 

 

 でも、私は相変わらず笑うことが苦手で…
 被写体になりたくない、目立たない生徒の一人だった。
 だから…
 こうして今、蔦子さまが私の脇を通り過ぎていったとしても、私には非難する権利なんてない。
 私はあの人にとって、日々変わる被写体の一つにもなれない生徒なのだから…
 あの『紅薔薇のつぼみさま』のような
 良い表情なんて出来ない
 生徒だから。

 

 

 私はその声に振り返って…
 シャッター音がした。
 その時、私がどんな表情をしていたのか…それは、わからないけれど
 きっと、フィルム一コマ分ぐらいの価値はある表情だったと思う。
 そんな表情でありたいと思う。

「最高の写真を撮るって約束したよね?」

 カメラが隠していた顔が現れて、そこに私はあの人を見つける。

 

 

 蔦子さんがバッグから取り出した封筒に写真が一枚入っていた。
 あの時の、姉と二人でチョコレートを食べたときの写真。
 確かに、思い出のアルバムにはピッタリの写真だった。

「これ、ヴァレンタインデイの…」
「そう。あの時は貴方、フライング参加だった訳ね。」
「えぇ、実は…でも、参加して良かったです。」
「そう?…うん、そうね。…時に――」

 蔦子さまがカメラを手にして、何かを弄る。
 何か言いづらいことなのかと、なぜだか、そのときは思えて
 続きの言葉を促すように
 私は相槌を打った。
 返ってきたのは一言。

「―-時に…貴方、お姉さまはいる?」

 

(みゃあ)蔦子さんの「妹を作らない理由」も不明なんですよね。

2005.2.5

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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