カニーナ・カンタービレ4 |
九月――――。
フィレンツェでの生活にもだいぶ馴染んできた頃。 私は大学への受験へ向けて、イタリア語と声楽の勉強に追われていた。 ロサ・カニーナ。 今は遠い国で、ほんの一時期呼ばれていた。 すべてが懐かしい。
|
二年藤組のみんな。合唱部の仲間たち。 そして祐巳さん。祥子さん……は、ちょっと思い出したくない思い出もあるけれど…。 turururururu…。 志摩子さんからのエアメールを手に、短い感傷に浸っていた私を電話のベルが現実へと引き戻す。 とうやら小母は不在らしい。 tur…。 「…Pronto? (もしもし)」
|
『ロサ・カニーナ…いえ、蟹名静さまでいらっしゃいますか?』 日本語…? 耳に馴染んだ母国語と、聞き覚えのない声に困惑する。 「そうだけれど…」 『突然申し訳ありません。実は、貴女のあるお噂をお聞きしまして、お電話いたしましたの』 「噂…?」 『ええ。…なんでも、音楽で姉妹の仲を取り持ったことがおありとか』 「……は?」
|
とてつもなく嫌な予感が、脳裏を駆けめぐる。 しかし、電話口の彼女は、そんなことはお構いなしに言葉を連ねた。 『ああ、別に私に気になる方がいるから、仲を取り持って頂く方法を教えてほしいとか、そういうことではありませんのよ?ええ決して。ちなみに私、幼い頃からヴァイオリンを多少嗜みますの。いえ、ですからヴァイオリンであの方と仲良くなる方法なんて気になるわけではなりませんわ。ええ、違いますとも…』 …これは一体。 っていうか、あなた誰よ。どうやってここの電話番号調べたの?(汗)
|
某おかっぱの親友経由で、ギンナン好きの方から(笑)。 |
2005.2.9 |