カニーナ・カンタービレ余録1 |
二月も初旬を過ぎたある日。 「あなたね。最近、聖…いえ白薔薇さまにモーションをかけているっていうのは」 「は?」 振り返って、静は固まった。 そこに、ヘンな人が立っていたからだ。 ほっかむりにサングラス、それだけでも十分怪しいのに、何故か黒いマントをして仁王立ち。 「すみません人違いです」 静は迷いなく背を向けた。
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「しらばっくれても無駄よ。…ほっぺにチュ、なんてされたぐらいでいい気にならないことね」 「……っ!」 「まったく聖ったら、下級生相手にはチャラチャラチャラチャラと、軽薄が服を着て歩いているようだわ。…そんなの私だってされたことないのに…ぶつぶつぶつ」 思わずきっ、とにらみ返したのだが、相手は見ちゃいなかった。 な、なんなのこの人…。 あれ…でも、今確か「聖」って…。 よくよく見てみると、ほっかむりからはみ出た髪型、物腰、にじみ出るオーラに見覚えが…。
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「あの…もしかして、紅薔薇さ」 「私はそんな名ではないわ。それよりあなた。白薔薇さまにはずっと心に決めた人がいることを知らないの」 ズキン。 「…久保栞さん」 「そうよ…。あの聖が、心から全てを許すただ一人の少女。あなたに彼女の変わりは務まらない」 そんなの分かっていた。でも…。 「いいえ、他の誰にだってそれは不可能。…慰めては元気づけ、ずっとずっと見守ってきた私にだってあんな笑顔を見せたことなんて一度もない…なによそんなに栞さんがいいっていうの私だって私だってね…」 「あ、あの…」
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涙目で愚痴り始めたその人がなんだか気の毒で、思わず声をかけてしまった。 彼女は、はっと我に返ると鼻をずずっとすする。 「とにかく!白薔薇さまには関わらないことね。どんなに美しい思い出でも、次の日には『あれ、そんなことあったっけ?』なんて真顔で言われるのがオチよ!」 一方的にまくしたてると、
それはあなたもなんですか…とは、口が裂けても聞けない静だった。
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もう、私の書く蓉子さまは壊れ専門(^^;。 |
2005.2.8 |