私だけ?

 

「それでは、由乃さまに続いて『エ*神』繋がりで私も1つご披露致します」
 おかっぱの髪がさらりと揺れる。志摩子さまの隣でおとなしく紅茶を飲んでいた乃梨子さんがすいっと立ち上がった。
「なになに? ド*ンクドラゴンとか?」
「祐巳、それはなんのことなの? 日本の方?」
 えーとですね、としどろもどろになりつつ祥子さまに説明をしている祐巳さまを置き捨て、乃梨子さんが口を開いた。

 

 

「山百合会の方々以外はご存じない話を致します。
 私だけ?
 紅薔薇さまは気高く美しい方だと皆様に思われているけど、実は祐巳さまがいらっしゃらないと途端にヒステリーになって誰にも手が付けられない、世間を殆どご存じないお姫様になってしまわれること」

 

 ぴた、と空気が凍る。駄目だよ乃梨子ちゃん、そんなことばらしちゃ、と令さまが一番言ってはいけない言葉をもらした。
 由乃さんの鉄拳が手加減なしで令さまを直撃した。

 

 

「乃梨子さん、祥子お姉様になんてことを仰るの!?」
 くってかかる瞳子さんをも流して、乃梨子さんは続ける。

 

「私だけ?
 ロサ・フェティダは凛々しい外見とは裏腹に、高等部3年間を通して、前黄薔薇さまと現ブゥトン2人の間で振り回されっぱなしで泣きをみてたこと」

 

 今度は紅薔薇家と志摩子さまがくすくす笑った。瞳子さんまで笑っている。コンマ1秒で仏頂面になったのは当然由乃さま。
「令ちゃんが江利子さまに無茶を言われても唯々諾々と従って来たからでしょう!? 私との約束も破ったりして…」
 暴走機関車発車寸前、と見た祥子さまと祐巳さまは慌てて令さまと由乃さんの間に割って入った。祥子さまなど、さっきまでの拗ねっぷりが嘘のようだ。ねえ令、しっかりなさい、ちょっと、令、なんて必死になっている祥子さま。令さまはロザリオ事件の時のようにうつろな眼で
「やっぱりそう見えるんだ…」と乾いた笑いを浮かべている。
 瞳子はちょっと祥子お姉さまの違う一面をみせてもらった気がしたが、この惨状はどうするつもりだろう、と乃梨子さんをじっと見る。すると、彼女はにんまりと笑ってみせた。

 

 

「…最後です。
 私だけ?
 瞳子…さんはどうしても祐巳さまの妹になりたがっているとしか見えない。

間違いない

 ……………。


「の、乃梨子さんなななんてことをっ わた、私は別に祐巳さまの妹になどっ」
 演劇部女優、の肩書きが泣いて逃げ出すどもりっぷりで瞳子が意味なくドリル…もとい縦ロールを振り回す。が、誰も見てはくれない。
「乃梨子ちゃんすごいね、長井*和まで! でもやっぱり瞳子ちゃん、そういう風に見える? 見えるのかな〜えへへ〜♪ 嬉しいなっ」
「そうね、私もそう思ってよ。志摩子もいい妹を持ったわ。ねえ、志摩子?」
「私もそう思いましたわ」
「使い方間違ってないよね、うん」
「令ちゃんまで…でも合ってる。うんうん。奇襲大成功って感じ」

 

「どなたか1人くらい、異議を唱える方がいらっしゃってもよくはなくって!!??」

 

 そしてその叫びは、背が高く、髪の長ーい彼女のライバル(?)にも聞こえたと言う。

 

(みゃあ)瞳子っていじられキャラですよね(^^;

2005.2.25

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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