甘党 |
「瞳子ちゃんってさ、結構甘党?」 何の脈絡もなく会話が飛ぶのが福沢流。合わせる方は、なかなか苦労が絶えない。 瞳子は、祐巳の前にコーヒーカップを置きながら、チロっと視線を向けた。 「コーヒーにクリーム2本とスティックシュガー2本入れる祐巳さまほどではありませんが。何故です?」 澄まし顔で、クリームとシュガーのスティックを2本ずつ添える。 「いや前さ、お昼時にいちご牛乳のパック買ってたから、そうなのかなって。あれ、結構甘いんだよね」 経験者は語る。ごはんと一緒に飲むには、ちょっと甘いのだ。 かといって、ホットミルクに入れたりすると、もの凄い味になることも、何故か知っている。
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「にしても、よく私の好み知ってるね」 瞳子はぷい、と顔を背けて、大したことではありませんと前置きする。 「薔薇の館で一月も過ごせば、自然と皆さんの好みは分かるようになります。別に祐巳さまだけではありませんのよ」 「そっか。じゃあ、例えば由乃さんは」 「由乃さまは、ミルクが大目がお好みのようですわね。日本茶も薄目のマイルド派」 ほー…と祐巳が感心する。
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「白薔薇さまは砂糖なしのミルクのみ。どちらかといえば、日本茶がお好み。黄薔薇さまはその時の気分次第でお好みが代わるようですので、随時お聞きします。紅薔薇さまは…」 「ミルクにお砂糖は半分!日本茶なら濃い目に」 「…さすがによくおわかりですね」 肩をすくめて、瞳子は椅子に腰を下ろす。
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「で?」 「…で、とは?」 「瞳子ちゃんはどうなの?」 「………」 「ん?」 目をキラキラさせる祐巳に、瞳子は言い淀む。口がへの字。 「う゛……クリーム2本とスティックシュガー2本です」 「なんだ、私と同じじゃない。甘党仲間だね♪」
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瞳子「むー…(←なにか納得いかないらしい)」 |
2005.2.27 |