レイニーなかきよ |
一月二日夜。祐巳の部屋。 「よーし!! 去年お姉さまに教わった『なかきよ』を今年もやるわよー!!」 祐巳はペンと千代紙を用意した。 「えーと…なかきよの…あれっ? 続きなんだっけ…そう言えば、帆掛け船の折り方もはっきり覚えてない…」 しばし沈黙。 「ま…まあいいわ!! これから調べるのも面倒だし、『なかきよの』ってだけ書いて後は適当に四つ折りにでもして…」 祐巳は四つ折りにした千代紙を枕の下に敷いてから、布団に潜り込んだ。 「お姉さま…夢に出てきて下さらないかなあ…」
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『リリアンかわら版号外・山百合会役員選挙で大番狂わせ!!』 『紅薔薇のつぼみ、まさかの落選!! テニス部所属新人・苗字不明桂さん、次期山百合会役員に当選!!』 え…嘘…そんな… 「祐巳さん。悪いけれど私の勝ちね。これからは、私が今まで味わってきた地獄のような苦しみを、貴方に味わってもらうわ」 か…桂さん…何を言ってるの…? 「祐巳さんが落選してよかったわよ。あんな天然ボケタヌキが山百合会の幹部になったら、私たちの苦労が絶えないわ」 そんな…ひどいよ…由乃さん… 「私もそう思う。それに、これで祐巳さんと縁を切ることができると思うと、本当にせいせいするわ」 ひどい…志摩子さんまで…そうだ、お姉さま!! お姉さまなら私を慰めてくれる!! お姉さまあー!! 「近寄らないで」 えっ…?
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「つぼみが選挙に落選なんて前代未聞。現紅薔薇の私も大恥だし、先代の紅薔薇さまにもあわせる顔がないわ。紅薔薇ファミリーの歴史の中で、最大の汚点よ」 お…お姉さま? 「貴方など、もう妹ではないわ。ロザリオを置いて、薔薇の館から即刻出て行きなさい。そして、二度と私の目の前に現われないで」 そっ!! そんな!! お姉さまあっ!! 「そうだ…出て行け…出て行け…出て行け…」 皆までそんな事!! いやだ出て行きたくない!! お姉さまあっ!! 「目障りよ!! さっさと消えなさい!!」 いやあっ!! お姉さまお願い見捨てないで!! お姉さまっ!!お姉さまああああああああああああああああああーーーーーー!!
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「祐巳? こんなに朝早く電話してきてどうしたの?」 「すみません…『なかきよ』のやり方を、もう一度詳しく教えて頂けませんか…?」 「それはもちろん構わないけど、今日するの? 普通は昨日するものだと思うのだけれど…」 「はい…それが…いろいろありまして…」 祐巳は『なかきよ』の和歌と帆掛け船の折り方をメモした。 「有り難うございます…お姉さま…」 「どういたしまして。それより祐巳、少し元気がないようね。寝不足かしら」 「ま…まあ…そんなところ…です」 「お正月だからといって、夜更かしするのはほどほどになさい。それじゃ。よい夢が見られるといいわね」 「えっ…? は…はいっ!! 有り難うございますお姉さま!!」 受話器の向こうでクスッと微笑んでから電話を切る祥子さま。沈んでいた祐巳の心もやっと、少しもち直したのであった。
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(みゃあ)桂さんが出てきた時点で夢確定(ヲイ)。 |
2005.4.02 |