二条乃梨子の事件簿
「黄薔薇のつぼみは二度墓穴を掘る」

 

「(まったく!菜々ったら一瞬喜ばせておいて、どん底までたたき落とすんだから…)」

お茶の追加を持って菜々がテーブルに戻ると、由乃さんは再びポットに茶葉をぶちまけた。

「(私のこと、令ちゃんへの伝言役くらいに思ってるのかしら)」

「かなり入れ込んでおられますね、由乃さま」
どわあ!

振り向いた目と鼻の先に、おかっぱ頭。
弾みで放り出しそうになったティーポットをかろうじて押さえると、由乃さんはぜはー、ぜはーと荒い息をつく。

 

 

「な、なんのことかしら?」
「いや、何のことと申されましても」

ちらり、と乃梨子は歓談が続いているテーブルに目をやる。

「別に私はっ。…菜々のことは少し気になる、程度で」
「有馬さんのこととは、ひと言も言ってませんが」
う゛っ…

「では、本気で来年は彼女を妹に?」
「なっ、なぜそれを?!」
「先日の『ごめん』発言と由乃さまの態度を総合すれば、答えは自明だと思いますが」
う゛う゛っ

 

 

「由乃さまって、意外とのめり込むタイプですよね」

「っっ、だから違うってば!私はただ菜々に…!」
「私がどうかしましたか?」
だああーっ?!

いつの間にか本人が側に立っていて、由乃さん大パニック。

「なななっ、なんでもないわよ!」
「そうですか」

あっさりと頷くと、再び戻っていく菜々。

「あ…」

 

 

「…由乃さま、気付いてます?今、もの凄い切なそうな顔してますが」

ゴン。

ばっ、と頬を両手で挟んで表情を隠す由乃さん。

「ちっ、ちが…」

ぽむ。

不意に肩に置かれた手に振り向くと…

瞳子ちゃんのなま暖かい眼差しが、「いじられ道へようこそ」と雄弁に語っていた。

 

由乃「いやーっ、それだけはいやーっ!」

2006.1.7

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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