ペテン師女子大生(前編) |
「キミはまだ、志摩子のことがよく分かってないんじゃないかなー」 わざとらしい口調で、その人はそう言った。 銀杏並木でばったり顔を合わせた。 乃梨子は、「ごきげんよう」と一分の隙もなく礼儀正しいあいさつをして、通り過ぎたのだが、その人は耳がないような顔で後をついてくる。
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「…どういう意味でしょう」 何を言われても挑発には乗らないつもりだったのだが、つい聞いてしまった。 その人、佐藤聖さまは「ん?」という顔でとぼけている。 憎たらしい。 聞きたきゃ、聞いてごらん、とその端正な顔が言っている。
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「…いいです」 乃梨子は、ぷいと顔を背けた。意地でも聞いてやるもんかと思った。 「あーあ、志摩子が悩んでいるのになー」 これだ。お見通しだよ、と言われている気がした。 「…何なんですか、志摩子さんの悩みって」
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「知りたい?」 「………」 「あ、うそうそ。キミはいい子だから、特別に教えてあげよう」 もったいつけた調子で、聖さまはにやりと笑った。 「…体育館裏で、大きな声で『ビビデバビデブー』と言ってごらん」 「は?」 乃梨子は間抜けにも、大口を開けて聞き返していた。
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一本にまとめきれないあたりが私の実力不足(^^;。 |
2006.1.9 |