二条乃梨子の事件簿「ブー×2殺人未遂事件」

 

ブッブー。

クラクションの音に振り向くと、校門前の道路を見慣れぬ黄色い自動車が徐行しながら近付いてきた。

そう、悲劇はこの時、すでに始まっていたのだ。
たまたま一緒に歩いていた祐巳さまが、露骨にうっ、という顔になる。
知り合いか…?と思って見ていると、運転席の窓が開いて…。

「やっほー、祐巳ちゃん。我が孫よ」
「ご、ごきげんよう聖さま」
「…ごきげんよう」

 

 

考えてみれば、この人は大学生なのだから、免許のひとつやふたつ持っていても不思議はないのである。

「乗ってかない?」

まるで遊び人かナンパ男のような口調。

「え、遠慮しておきます」

祐巳さまは、明らかに及び腰。

「あれ、つれないなぁ祐巳ちゃん。…で、そっちの人は?」
「では、せっかくですのでお願いします」

…そっちの人呼ばわりと、その挑発的な目が、私の普段は眠っている闘争心に火を付けていた。

 

 

「…あの、乃梨子さん。何故私はここにいるのでしょう」

後部座席から、途中でとっつかまえて拾った瞳子が愚痴る。

「困っていたら助け合うのが友達だろう(ぼそぼそ)」
「意味が、よく…(ぼそぼそ)」

お家柄、こういう小さい車には乗り慣れていないのか、落ち着かなげだ。

しかし、車は思ったよりも丁寧な運転で進んでいく。
祐巳さまの態度からすると、少し拍子抜けだ。

「運転、お上手ですね」

礼儀以上のものではない褒め言葉。
しかし、運転席の女性は首をひねっている。

 

 

「いや。久しぶりだから勝手が違う」

「え…。久しぶりって、どれくらい…?」
「かれこれ1年くらいかな」

逆算すると、まだ高等部在学中にな…る。

「あ」
「な、なんです」

彼女は、謎が解けたとばかりに、ぺしっと膝を叩いた。

「なんかおかしいと思ったら、サイドブレーキ引いたまんまだった

「…すみません、おろしてもらえますか?」

 

後ろの瞳子ちゃんも真っ青だ(^^;。

2006.01.17

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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