ぶんめいのりき |
それは紅薔薇のつぼみなんて呼ばれるようになって、しばらく経った頃。 「祐巳ちゃん、祐巳ちゃん」 よーく見知った顔が、校門のところで手招きしている。 …この間は、卒業したんだからほいほい会いにこないように、って感じの態度だったくせに、そんなことはすっかり忘れたような、にこにこ顔。
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白薔薇さま…じゃない、佐藤聖さまは、嬉しそうに手にした物を見せた。 手の平サイズの四角い物体。 「これはね、ケータイっていうんだよ」 「はあ…」 言いたいことがよくわからず、私はまじまじと聖さまの顔を見返した。
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すると聖さまは手慣れた手つきで、ピピピピ…とボタンをプッシュする。 「ほら、こんな風に文字が打てちゃう」 「あの…」 しかし、聖さまは構わず、今度はそれを耳に当ててみせた。
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「そしてこうすると、なんと電話がかけられるんだよ」 「…聖さま。分かってて、からかいに来てますね?」 「わかる?」
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だって、リリアンには携帯電話は存在しないから(笑)。 |
2006.01.19 |