ベイクドライスケーキ

 

「祐巳さま、よろしいですか?」

ミルクホールを出たところで、可南子ちゃんが立ち止まる。

「実は、先約がありまして」
「あっ…そうなんだ」

ちょっと残念な気持ちで、じゃあ仕方ないね、と続けようとしたら、可南子ちゃんはぷるぷると素早く首を振った。

「いえ、よろしければぜひご一緒に」

 

 

「うん、もちろん私は構わないよ」

可南子ちゃんの先約か…誰だろう?と、渡り廊下を渡ったところに、彼女はいた。

「お待たせ」
「あっ」
「あ…っ」

お弁当箱を入れた袋と、イチゴミルクのパックを持ったその人は、紛れもなく…。

「…ごきげんよう」

祐巳と顔を合わせるなり、ぷいと踵を返す。

 

 

「あら、瞳子さん。今日は一緒にお昼ご飯を食べる約束だったのでは」

その背中に、可南子ちゃんが殊更のんびりと声をかける。

「…そうでしたけれど。お邪魔のようですので」

「誰も邪魔なんて言ってませんよ。そうですよね、祐巳さま?」
「う、うんっ」
「瞳子さんともあろう方が、約束を守らないはずないわよね」
ぐっ…」

文字通り、ぐぅの音も出ない瞳子ちゃん。可南子ちゃんはにこにこ笑っている。

 

 

じーっ…。

「…な、なんですか、その目は」
「えっ?…いや、なんでも

「勘違いしないでいただきたいのですけど。今日はたまたま、そういうお約束をしましたけれど、別にいつもご一緒しているわけではありませんのよ」
「ふーん…」

「………」
「………」

 

まったく、この二人は…と、可南子ちゃんは優しい目で小さく吐息した

2006.01.26

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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