お姉さまのつとめ |
…み。 我に返った拍子にガタンと椅子を鳴らしてしまった。結構、長い間ぼうっとしていたらしい。 「お茶をもう一杯おねがいできるかしら…と言ったのだけれど」 ばたばたばた…。
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「祐巳、忘れ物はない?」 もう一度室内を確認して、電気を消す。 「………」 慌てて鍵をかけて、外へ出た。
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「寒いわね…」 ほら、祐巳…と言われて、手袋をし忘れていたことに気付く。 「祐巳。よかったらこの後、駅前の書店に付き合ってほしいのだけれど」 なんだか珍しいな…と、ちらりと覗き見ると、こちらを見ていたお姉さまと目が合う。 もしかして―――
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ずっと…見ていてくださったんですか? ――――きゅぅ…。 「お姉さま!」 てててっ……ぎゅ! 「祐巳…?」 お姉さまの腕をぎゅっと抱き締めて、えへへと笑った。目尻に浮かんだ雫が、こぼれないように。
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(大好きです。大好きです、お姉さま…) |
2006.01.29 |