対汁飛び防御流用胸部装甲

 

「つゆが飛びそうですね…」

大学の麺食堂。注文して出てきたラーメンを前にして、乃梨子は呟いた。
対面に座った祐巳さまと由乃さまは、あっという顔をする。

「しまった…」
「そうだった…」

食券はクリスマス会のツイスターゲームの商品。本当は志摩子さんも誘いたかったのだが、都合がつかず断念。残念。

 

 

「また、あれ?」
「そだね」

お二人は目配せすると、制服のポケットからハンカチを取り出して、前かけのように首に掛けた。

「あの。そ、それは…」
「汚れちゃまずいし…ね」

確かにそうなのだが…いや、しかし。
かなりためらってから、しぶしぶ乃梨子もハンカチを掛ける。

「「「いただきます」」」

つるるっ…あ。意外とおいしい。

 

 

おっ、お子さまランチだ、お子さまランチの集団がいるー。
ちょっ、やめなさいよサトーさん!

………。
振り返る必要もなかった。

見える。「あの人」がこっちを指さして笑っている姿が。

激しい後悔が襲ってくるが、後の祭りだ。

乃梨子は、ひたすら麺を食べることに集中した。
一刻も早く食べて、一刻も早くこの場を後にする。それしか、この窮地を脱する術はない。

 

 

祐巳さまと由乃さまも同じ考えのようで、恥ずかしさに顔を赤らめながら、黙々と麺をすすっている。

「ん…赤ちゃんというより、お地蔵さんだねこりゃ」

ブふぉっ!
「だ、だいじょうぶ由乃さんっ?!」

ツボった由乃さま暴発。

…なんの拷問だ、これは。

 

二度とここには来るまいと心に誓う乃梨子だった。

2006.02.01

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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