私の妹 |
「令ちゃん…」 令は人目を引く子だ。 しなやかな長身に、ボーイッシュな顔立ち。 どこへ連れて行っても、大抵人の輪ができる。
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バレンタインともなれば、同学年はおろか、上級生からもチョコレートをもらう始末。 その点、蓉子の妹の祥子にしても同様なのだが、令にはどこか気が置けないところがある。 姉である私としても、満更でもない。 「行くわよ、令」 だけど、私が気に入っているのは、そうした表面的な部分だけではない。
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人の輪をほどいて、私についてくる小走りの令。 とてててて…。 私から見て表現するなら、そんな感じ。 「くす」 ありきたりの感情かもしれないが、可愛い。 動物に喩えるなら、親鳥の後を一生懸命追いかけてくるひよこ。
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「なんでもないわ」 もちろん、慕われて悪い気はしない。 令の前髪を二本の指でもてあそぶ。 お姉さまだけの特権。 「?はあ…」 よく分からない顔で、されるがままになっている。少しだけ、照れくさそうに。 そんな令が、私は好きだ。
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決して、他人には口にしないけれど。 |
2006.02.02 |