もののたとえ |
「そういえば…」 お気に入りのティーカップをソーサーに置いて、お姉さまが切り出した。 「先日、こういうたとえ話をしたのよ。聖ちゃんが薄いガラス細工の置物なら、蓉子は高級風呂敷ねって」 “高級”を強調してくださるのは嬉しいが、その含み笑いはやめてほしい。 「江利子ちゃんをたとえるとしたら、何になるのかしらね、黄薔薇さま?」
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書類をめくっていた黄薔薇さまは、隣の江利子と顔を見合わせた。 興味津々といった感じの江利子に、黄薔薇さまはふーむ、と首をひねる。 「瑠璃か玻璃ってところかしらね」 「あら、ごちそうさま」 なるほど、すぐれた人物はどこにいても目立つ、ということわざから引いたのだろう。白薔薇さまが微笑む。
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しかし、あろうことか黄薔薇さまは、江利子のおでこに手をやると、キュッキュッとこすってみせた。 「照らすと光る。」 そっ、それは意味が違うのでは…ぅぷっ。 「お姉〜さま…」 江利子が、ぷるぷる震えている。私は笑いを堪えるのに必死だった。 「フッ…」 ふっふっふ…と黄薔薇さまが突然笑い出す。
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「なに、なんなの?」 白薔薇さまは、頭の上にクエスチョンマーク。私とお姉さまも同様だ。 「きょう一日、『お姉さま』って言うか言わないかで、賭けをしてたのよ」 勝ち誇る黄薔薇さまに、悔しがる江利子。 「「「………」」」 ヘンな姉妹。
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「瑠璃(るり)も玻璃(はり)も照らせば分かる」ってのもあります。 |
2006.02.07 |