白薔薇の悪戯

 

「…聖ったら。髪がバサバサじゃない」

何気なく私の髪に触れたお姉さまが、呆れたような顔をする。

「別に、いつも通りです」

そう、いつも通り。背中まで伸びた髪は、大した手入れもしていない。
そういうことが嫌いなわけではない。ただ面倒なだけだ。

それに元来、私の髪はそれほど艶のある髪質ではないらしい。
たとえば、目の前にいる蓉子の黒髪なんかと比べれば。

 

 

「しようのない子ね」

言いつつ、お姉さまは鞄から小さなブラシを取り出す。

「ほら、動かないの」
「お姉さま、別に…」
「たまには、私に聖を愛でる機会をちょうだいな」

身じろぎをする私を制して、お姉さまの手が私の髪を梳いていく。

シュッ…シュ…。

やわらかな感触に、私は目を閉じた。

 

 

その感触は、ただでさえ睡魔に弱い私を眠りに誘う。
お姉さまの鼻歌は、まるで子守歌のよう。

………。
………。

くっ。
蓉子の笑いをかみ殺すような声で、目が覚めた。
なぜか首の後ろがスースーする。

…えっ?

 

 

「お姉さまっ」

気がつくと、あろうことか私は三つ編みにされていた。

「可愛いわよ、聖。ねえ、蓉子ちゃん」
「ぷっ…はい、とても」

うそをつけ。どう見ても、笑いをこらえてるじゃないの。
食ってかかろうとした私に、お姉さまは満足げに微笑みかける。

「どんな髪型でも、私は聖の顔、好きよ」

…やはり、お姉さまは私の扱いが上手い。
そんな顔でそんなことを言われては、文句も出なくなってしまう。

 

少しだけサラサラになった髪を、私は無言で撫でてみた。

2006.02.12

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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