蝶よ花よ

 

「ご紹介いたします、お姉さま方。私の妹、小笠原祥子です」
「よろしくお願いいたします」

初めて薔薇の館に足を踏み入れた蓉子の妹は、そう言って淑やかに頭を下げた。

何かと話題の人物だから、私でさえ顔くらいは知っている。
姉そっくりの黒々とした艶やかな長い髪。
すっと伸ばした背に、切れ長の目には凛とした眼差しが宿る。

それは見ていて憎らしいほど、落ち着き払っていた。

 

 

お姉さま命令で顔を出していた私にも、目が合うと会釈をしてみせた。

まるで他人の内面を見通すような目は、私にはどうにも居心地が悪い。

「どうも…」

私はおざなりに返事をして、視線を逸らした。
蓉子は、どうしてこんな面倒そうな子を妹にしたのだろう…。

しかし…。

 

 

「きゃーっ、可愛いわ祥子ちゃん!」
「おー、髪がさらさらだ。ほらほら」
「ね、お下げにしてみましょうよ」
「さすが蓉子。よくぞものにしたわね。姉思いのいい子だわー」
「んもー、抱き締めちゃうっ」
「ねえ、お菓子食べる?お菓子」

「…あの…」
「お姉さま方っ!」

 

 

三人の薔薇さまに過剰にもみくちゃにされて、困惑顔の祥子。
蓉子が珍しく顔を真っ赤にして怒っている。

その様子に、私は少し溜飲を下げる。

「楽しくなりそうだわ」

江利子の含み笑いを聞きながら、それは同情に変わった。

これは、あの人たちのいいオモチャだわ。…ご愁傷様。

 

祥子さま、先代・薔薇さま方には甘やかされまくっていたと想像(笑)。

2006.02.13

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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