「瞳子!」

2月14日。放課後。
何のリアクションも起こさず、さっさと帰り支度をして教室を出かけた友人を見かねて、肩に手をかけた。

「…余計なお節介なのはわかってるけど、今日くらい素直になってもいいんじゃない?」
「…なんのことでしょう」

冷ややかな眼差しで、瞳子が振り返る。

「チョコレートのこと」
何のことか分からないとは言わせない。
周りはその話題で一色だ。乃梨子ですら例外ではない。

 

 

「祐巳さまに、渡さないの?」

キッ…と、瞳子は恐い顔で睨んだ。

「なぜ、私が祐巳さまにチョコレートを渡さなければなりませんの」
「瞳子…」

困った顔で、私は彼女の持っているカバンを指さした。

「その中に、入ってるんでしょ」

せっかく、用意しているのに…。きっと、祐巳さまが下級生からたくさん受け取っているのを見て、渡すに渡せなくなったのだろう。

 

 

「誤解しておられるようですけれど」

皮肉げに口元を歪めると、瞳子は鞄を開けて、その中身を見せた。

…ない。

「そんなもの、初めから入っておりません」

そんな…でも。

「分かっていただけました?では、ごきげんよう」

さっさと踵を返す瞳子を、あわてて追いかける。

「待ってよ、ねえ…」

 

 

「あっ、瞳子ちゃん!」

廊下に出ると、階段の辺りで祐巳さまが、ぶんぶか手を振っていた。

今朝はありがとう!すっごくうれしかったよ。日曜日、楽しみにしてるからねー!

………。
ほーう。

「朝イチかよ。」

ぎくっ。

「しかもデートの約束までして」
「な、なんのことでしょう(→目そらし)」

 

乃「心配してソンした(-.-")。」 可「(ポン)まあまあ…(^^;」

2006.02.14

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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