アンユースフル・プリンス

 

「…こんなところで何をしてるんだ、ギンナン王子」

校門前、唐辛子色のスポーツカー。定位置に気にくわないその男はいた。

「…さっちゃんに頼まれてね。言っておくが、僕はそんな名前じゃない」
「足代わりか。所詮はそんなとこだろう」
「なんとでも言ってくれ。それより君こそ何の用があるんだい、佐藤君?」
「貴様に用なんかあるわけないだろう。私は年長者の義務として、不審者を見張っているだけ」
「だから、女が貴様って言うなよ」

延々と不毛なやり取りが続くかと思われたが、校舎の向こうからやってくる人影を認めて、柏木は口をつぐんだ。

 

 

「っくしょ!」
「…ほら祐巳ったら。鼻をかみなさい」
「いっ、いえ、ティッシュがありますから。どうぞハンカチはしまってください…」

微笑ましい寸劇を繰り広げながら、彼女たちがやってくる。

「祐巳ちゃん、祥子。やほー」
「やあ、祐巳ちゃん」
「聖さまっ。それに柏木さん?!」

「きゃっ」

その時、祥子の手から突風がハンカチをさらい、高い立木の枝に引っかかった。

 

 

「やだ…困ったわ」

「ここは男の僕の出番かな?」
「…こんなところでだけ、男を持ち出すのか。本当に古い考えが染みついた人間だな」

言いつつ、聖は舌打ちした。自分も背の高い方だが、あの高さでは悔しいけれど届かない。

「適材適所という言葉があることを学んだ方がいい。ほら、さっちゃん――」

ひょい。

「どうぞ、紅薔薇さま」
「あら、可南子ちゃん。ありがとう」

 

 

「………」
「………」

・・・・・・・。

「あ…の…?私、何かまずいことをしましたか?」
「っ可南子ちゃん、お手柄!君は最高」

体全体で笑いをこらえながら、聖は長身の少女の肩を抱く。

「適材適所。いい言葉だ、腹がよじれるほど。いやぁなんだか気分がいいな、みんなにコーヒーおごってあげやう。唯一の適所を奪われた哀れな男はほっといて、いこいこ」
「は、はあ…」

ぷるぷるぷる…。

 

祥子「あ、あの、優さん…?」

2006.02.18

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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