ききかん

 

「祥子。最近、ちゃんと祐巳ちゃんとコミニュケートしてる?」

冬のある日、薔薇の館の2階で、令が唐突に切り出した。

「…なんなの突然」

祥子は紅茶をひとすすりして、令を一瞥する。

「あなたに心配かけるほど、私たち姉妹の絆は細くはないつもりだけど」

そっけない言葉の端々に、余裕とさりげないのろけが見え隠れ。
おー、祥子もなかなか言うようになったな、と思いつつ令は続ける。

 

 

「最近、祐巳ちゃん、瞳子ちゃんのことで頭がいっぱいでしょ」
「ああ、そのこと…」

なんだ、という風に祥子は笑う。

「心配いらないわ。最終的には当人同士の問題だし、とやかく言わなくても、祐巳ならきっと最善の道を選ぶはずよ」

「そういうことじゃなくてね。妹になった場合が問題なんだって」
「どういうこと?」

「…瞳子ちゃん。あの子、いったん気を許した相手にはべったりよ、きっと」

由乃にべったりの自分が言うのだから、間違いはない。

 

 

「何を言っているの、そんな…」

笑い飛ばそうとして、祥子の脳裏に過ぎったのは、少し前まで自分にべったりだった瞳子ちゃんの姿。自分と祐巳を置き換えてみる。

『祐巳さまぁ、一緒に帰りましょう(腕組みっ)』
『祐巳さまったらぁ(抱きつきっ)』

「………」

「祐巳ちゃんだって、妹ができたとなれば可愛がるだろうし。…ヘタすると、卒業前に2人から取り残される、なんてことも」

 

 

「………」
「………」

ガタンッ!

「祐巳っ、祐巳はどこなのっ?!」

椅子をけって立ち上がると、祥子はすごい勢いで外に飛び出していった。

「そうそう。いちゃいちゃするなら今のうちだって。って…私も人のことは言ってられないのよね」

 

結局、令もそそくさと由乃を探しにいきました。

2006.02.19

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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