Eの戦慄

 

「失礼します」

金曜日の放課後。ノックの後にビスケット扉の向こうから顔を覗かせたのは、中等部の制服。

「菜々?!」
のほほんとお茶をすすっていた由乃は、飛び上がるように椅子から立ち上がった。

由乃さんが呼んだの?と祐巳さんが目で問い掛ける。
ぶんぶんっ、と由乃は勢い良く首を振った。
クリスマスパーティーの時は特別だったが、中等部の生徒が平日の放課後に薔薇の館を訪れるというのは、かなり異例だ。
まして、彼女はまだ由乃の妹ではないし、ここへ来る理由が思いつかない。

 

 

「…で。何の用なの」

お客様を立たせたままじゃ…と、志摩子さんの取りなしで、椅子とお茶が用意された。

「よ、由乃さん…」
責めるような言い方を祐巳さんがたしなめる。

いや、実は嬉しいのだ。わざわざ会いに来てくれたのかと思えば、頬が緩みそうになる。
しかし、それでは示しがつかないと思っている由乃は、厳格な上級生を演じてみるわけで。

「いえ。本来部外者が来るべきではありませんから、由乃さまの反応はごもっともです」
「わかっているならいいわ」

相変わらずソツのない答えに、内心満足げに、しかし顔は厳しく、由乃は無言でお茶を一口含む。

 

 

「実は、お手紙を預かりまして。鳥居江利子さまから」

ブーーーーッ!!

「祐巳さん…ハンカチ」
「…ありがと」

「ななななな菜々に、江利子さまが手紙っ?!」
っていうか、あの方なに普通に来てるのよっ、よりにもよって菜々のとこに!

「いえ、私ではなく由乃さま宛で」
「貸してっ!」

菜々がひょいと鞄から出した手紙をバッとひったくる。
ガサ…ッ。

 

 

『どう?愛しの菜々ちゃんに平日から会えて嬉しい?嬉しい?

嬉しいでしょ、このぉー(はぁと)』

グシャッ。

わなわなわなわな…。

「あの。明日も来るって言ってましたが」
「明日もっ?!」

 

でーでん、でーでん(ジョーズのテーマ)(笑)。

2006.02.22

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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