ぬいぐるみ・めらんこりぃ

 

「ごきげんよう、令さま」
「……ああ、志摩子」

薔薇の館2階の部屋に令さまひとり。

ついこの間も見たような光景がそこに…。

………。

…とすると、まさか35体目?!と、思わず令さまの手元を覗き込む。

 

 

「あら…それは」

人を模したぬいぐるみには違いないが、制服の胸元が、タイではなくリボンだ。

そして、セミロングの髪。由乃さんではない。

「もしかして、有馬菜々ちゃん、ですか?」

「ええ…そうなの」

頷くと、令さまはなぜか小さなため息をついた。

 

 

「由乃に頼まれてね」

「由乃さんが…」

やはり、相当入れ込んでいるらしい。

これは由乃さんが3年生になった暁には、薔薇の館に新しい顔が加わるに違いなかった。

「そう、由乃がね…『な、菜々のを作ってくれない、令ちゃん!』ってね。なぜか頬を染めながらね…」

「?はあ…」

 

 

私のぬいぐるみは、頼まれたことないんだけどね…ハハハハ

ハハハハ…という笑いが、絶望的に乾いている。
喩えるなら、そう、ゴビ砂漠の砂のよう。

「そ、それは…あの」

ああ…こういう時、フォローべたな人間はどうしたらいんでしょう、とマリア様に祈る志摩子だった。

 

迷わずエスケープ(笑)。

2006.03.19

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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