白薔薇・名残 |
「失礼いたしました」 優雅ともいえる仕草で一礼するお姉さまにならって、不器用に頭を下げる。 廊下に出ると、1月の冷たい風が首筋を一撫でして、私は思わず首をすくめた。
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「次は、クラブハウスね」 にこりと微笑んで、お姉さまは歩き出した。
三学期―――。 私はお姉さまに連れられ、山百合会に関するさまざまな仕事をこなしていた。 もうじき3年になろうという人間が、幼稚舎の生徒のようにお姉さまに連れられて歩く様は、相当に恥ずかしい。
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本当に恥ずかしい思いをさせているのは、お姉さまの方。 弾むような足取りで前を歩く後ろ姿を見つめて、私は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。 沈みがちな私の手をお姉さまは引いてくれる。 「…すみません、お姉さま」 思わず、そんな言葉が口をついて出た。
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足を止めて振り返ったお姉さまは、きょとんとした顔で私を見返した。 「…お世話ばかりおかけして」 瞬きをしたお姉さまは、ばかね、と言った。 「私、嬉しいのよ」 「え…」 お姉さまは優しく微笑んで、短くなった私の髪にそっと触れた。 「最近はいつでも側にいて、あなたの顔を見ていることができるんだもの」
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私は小さくうつむいて、熱いものを誤魔化した。きっとお姉さまには、お見通しに違いないけれど。 |
2006.03.26 |