百合の園にようこそ |
「ごきげんよう」 「ごきげんよう」 耳慣れない、思わず気後れしてしまう挨拶がこだまする。 マリア様のお庭に集う生粋のお嬢様たちが、天使のような無垢な笑顔で行き過ぎる。 私立リリアン女学園学園祭。
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思い思いの一張羅に身を包んだ三人の少女が、所在なくマリア像の前に佇んでいる。 何しろ、受付からしていきなり、「ごきげんよう」だ。 舞い上がってしまって、確かにポーチに入れたはずのチケットが、どうしても見つからない。 大丈夫ですか?とにっこり微笑まれると、理由もなくドギマギしてしまう。 その間も飛び交う「ごきげんよう」の嵐。
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ようやく校門をくぐった頃には、すっかり雰囲気に当てられてしまっていた。 「話には聞いてたけど、もの凄いとこだね」 「なんか、背中むずむずしてくる…」 「これは、わたしたちと住む世界が違うって」 気分は完全に「不思議の国のアリス」。 待ち合わせに指定されたマリア像前は、時折、制服や私服の女性が熱心にお祈りを捧げていくので、余計に肩身が狭い。 困ったな…と思っていると、おーいと手を振る見知った人影が。
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「リコ!」 「遅いじゃんっ」 「来てくれて良かったよぉ〜」 ほとんどすがるように、三人の少女はおかっぱ頭の女生徒に駆け寄った。 「久しぶり。あれ、時間通りだと思ったけど」 中学時代の同級生は、やはり見慣れぬ深い色の制服に身を包んではいたが、無愛想にも見える日本人形のような顔立ちは、以前のままだった。
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男なら迷わず回れ右しそう(^^;。柏木氏は偉大だ(笑)。 |
2006.03.27 |