上玉 |
組長と手下にたっぷりとお灸を据えた乃梨子と志摩子さんが校門の近くを通りかかると、「リコ」と呼ぶ声がした。 「あれっ、菫子さん。随分早いね」 「何言ってんの、時間通りじゃない。待ち合わせ場所にいないから、どうやって探そうかと思った」 よそ行きに「おめかし」した菫子さんは、あきれ顔で腰に手を当てた。 「えっ、もうそんな時間?!…ごめん」
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「まあ、会えたから良しとしますか。そちらは、もしかして…?」 「あっ、紹介するね。ええと、私のお姉さまで…」 お姉さま、と言うときに、ちょっと照れが入った。 「初めまして。藤堂志摩子と申します」 「ごきげんよう。二条菫子、この子の大叔母よ。リコ…話には聞いてたけど、随分とまあ、上玉じゃないの」 どがしゃばたーんっ!
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「すっ、す、菫子さんっ!」 何を言い出すかと思えば…言うに事欠いて、上玉はないだろう。あんたは、どこぞのやり手ババァかっ。 「ふぅん…いや、これは上玉だ。今どきこんな上玉な子は珍しい」 くすくす…。 ヒートアップする乃梨子の横で、志摩子さんは口元に手を当てて、さもおかしそうに笑っていた。
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志摩子さんに笑われた…志摩子さんに笑われた… 「もーっ! もーっ!」 「あいたた、ごめん、ごめんてばリコ」 恥ずかしいやら、恥ずかしくないやらで、リコぱんち!リコぱんち!えいえいっ!
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授業参観並みの恥ずかしさ。でも菫子さん、ご満悦(笑)。 |
2006.3.31 |