友情 |
「さて、と。リコ、私はのどが乾いたわ」 眉を寄せる乃梨子の前に、500円玉が飛んでくる。 「わわっ…もう、いきなり投げないでよ」 「おや、人を待たせといてどの口がそんなこと言う。しかも、お代は出してあげようってのよ?」
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「それじゃあ、緑茶を」 二人の軽妙なやり取りを微笑みながら見守っていた志摩子は、ごちそうになります、と菫子さんに頭を下げた。 「じゃあ、すぐに行って来るから。…志摩子さんに変なこと言わないでよね」 しっかり念を押すと、乃梨子は自販機を求めて走っていった。 「あーあ、スカート翻らせちゃって。まったく、はしたないんだから」
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乃梨子の姿が見えなくなると、菫子さんは居住まいを正してあらためて頭を下げた。 「いつもあの子がお世話になってます」 志摩子も背筋を伸ばして返礼する。 「本当に?」
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「随分と気に入ってくれているみたいね」 やがて、缶を抱えた乃梨子が息を切らせて戻ってきた。 「行ってきましたっ…って、何笑ってるんですか志摩子さん。まさかまた、菫子さんが変なこと言ったんじゃ…っ」 志摩子と菫子さんは顔を見合わせて…声を上げて笑った。
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乃梨子「な、なに、なんなの?し、志摩子さーん…(眉への字)」 |
2006.4.1 |