ロサ・フェティダぶらり旅からお読み下さい。

黄薔薇戦争

 

「だから、悪かったって言ってるじゃない」

すっかり日も暮れた令の部屋。 完全にむくれてしまった由乃を、令が必死になだめすかしていた。

ちなみに、黄薔薇さまは少し前から席を外している。

「今日はずっと、ずーっと一緒に、二人だけで過ごすって言ってたのに!」

「仕方ないじゃない。お姉さま、突然いらっしゃったんだもの」

「う〜〜〜っ」

「そんなに唸らないでよ。ほら、可愛い顔が台無し」

言いつつ、怒ってすねた顔も可愛いな、と思ってしまう姉バカな令。

「令ちゃんのばか!うそつきっ」

「いや、うそつき…たって」

 

 

ガラッ。

その時、黄薔薇さまが戻ってきた。言い争う二人を気にすることもなく、由乃を一瞥して一言。

「あら、由乃ちゃん、まだいたの」

カチーン。

「…私の家、隣ですから。それより黄薔薇さまこそ、そろそろお帰りになった方がよろしいんじゃないですか…って、あれ?」

その時やっと、黄薔薇さまが濡れ髪のうえ、全身から湯気を立てているのに気付いた。頬もほんのり桜色で、妙に艶っぽい。

「いいお湯だったわ。…ごめんなさいね、お先に頂いちゃって」

「お、お湯って…」

「ああ。今日、ここに泊めてもらうことにしたから」

「ええーっ!!」

そんなの聞いてないっ、どういうこと!と横を見るが、令ちゃんは困ったような顔をしているだけ。

 

 

「あ、令。悪いんだけど、ちょっと肩揉んでくれる?首がこってしまって…」

「あっ、はい」

茫然としている由乃をよそに、湯上がりお肌ぴっちぴちの黄薔薇さまは、優雅に腰を下ろした。

「あー。気持ちいい…。令って手が大きいから、とってもいいわ」

ギリギリギリギリ…。

「そ、そうですか?」

ギリギリギリギリ…。

先ほどから、こっちを睨んでいる由乃の歯ぎしりする音で、それどころではない。

まさに、前門の姉、後門の妹状態。

 

 

「…黄薔薇さま。肩なら、私が揉んで差し上げますわ!」

たまりかねて、由乃は間に割って入った。

「あら、そう?…でも、由乃ちゃんにうまくできるかしら

さすがは黄薔薇さま、まったく動じることなく、不敵な笑みを浮かべた。

「ええ、それはもう。いつも令ちゃんで慣れてますから。きっちり、たっぷりお揉みしますわ」

肩なんて揉んでくれたこと、あったっけ?と令は思ったが、やぶ蛇になりそうなので黙っておいた。

「そう。ふふふ、楽しみね」

「ほほほほほ」

「うふふふふ」

バチッ、バチッ!

うう…せっかくの休みなのに、これじゃあ気が休まるヒマがないわよ。

火花を散らす二人に挟まれて、しくしくと涙する令であった。

 

可哀想な令さま(^^;。

2004.02.09

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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