ロサ・フェティダぶらり旅からお読み下さい。

お姉さまはつらいよ

 

「ここでいいわ、ありがとう」

早朝の支倉家前。門を出たところで、黄薔薇さまは言った。

「迷惑かけちゃったわね、急に押し掛けて」

「いいえ、そんなこと…」

「ちょっと気が滅入ってたんだけどね。…ありがと、楽しかったわ」

「お姉さま…」

「由乃ちゃんには、謝っておいて。『お姉さまを独り占めして、ごめんなさい』って」

「…はい」

「じゃ、ごきげんよう」

「ごきげんよう」

いつものように微笑んで、小さなスポーツバッグ1つ手にした黄薔薇さまは、歩いていった。

 

 

「…帰ったの、黄薔薇さま」

島津家の方から様子をうかがっていたのか、由乃が顔を出した。

「コラ。そんな言い方するもんじゃないよ、由乃」

「だって…」

口をとんがらせる妹の頭に、令はヤレヤレという感じでポンと手を置いた。

「…お姉さま、ちょっとご家族と揉めて、飛び出してきたんだって。ほら、山辺さんのことで」

「え……そう、だったんだ」

意外なことを聞かされて、急に由乃の勢いがしぼんだ。

「反省した?」

「う…」

「あんまり邪険にするもんじゃないよ。何て言ったって、由乃のお姉さまのお姉さまなんだから」

お姉さまのお姉さま、か…。 

呟いて、由乃は家の前を続く道路の先を見やった。

その人の姿はもうとっくに見えなかったけれど、後ろ姿が目に浮かんで、由乃は少し、反省した。

 

 

 

 

 

黄薔薇三部作 完

 

 

 

 

 

――――数日後。

 

ガチャッ。

「令ちゃん、ただいまー!今日ねぇ…」

「あら、由乃ちゃんお帰り」

がたーんっ!

「ロッ、ロッ、黄薔薇さま?!」

「ごめーん。また家族と揉めちゃって。今度は2〜3日、厄介になるわ」

うふふっ…なんてあっけらかんと笑う黄薔薇さまに、由乃は髪をかきむしりながら爆発した。

「うがぁーっ!!」

ハァ…いつになったら平和になるんだろう。

一人、かいがいしくお茶の用意をしながら、そっと涙を流す令だった。

 

ホントに、完。…これなら、短編一本書いた方が楽だったかも(^^;。

2004.02.10

 

爆笑! くすりっ もえ〜 じんわり つまんない

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